徳島県障害福祉課への要望について

徳島県障害福祉課への陳情報告をします。

平成25年7月4日


徳 島 県 知 事

飯 泉 嘉 門 殿

徳島県自閉症協会

会長 堀内 宏美

要 望 書


本年4月1日に施行された障害者総合支援法では、障害者基本法と同じく、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること」「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すること」 「可能な限りその身近な場所において必要な支援を受けられること 」「社会参加の機会を確保すること」「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」「社会的障壁を除去すること」を基本理念としています。

県におかれましても、この基本理念に基づき、障害者施策の推進により一層積極的に取り組んでいただけるものと期待いたしております。つきましては、以下の事項に対して県として適切な対応をお願いします。


1 施設のあり方について

入所及び通所施設の整備・拡充が県内各地で進められており、運営内容も家族や障害者本人のニーズに沿った支援や家族への情報の提供を幅広く行っていただいていることに心より感謝申し上げます。しかし、その設置数及び運営内容には地域・施設によって大きな格差があり、受けられる支援や情報に大きな違いがあります。

このような地域・施設による格差をなくし、県内のどこで暮らしても同じように適切な支援、情報提供が受けられるよう、施設に対する支援及び指導を行ってください。

また、入所施設の新設・定員増が望めない今、グループホーム・ケアホームの定員数は、入居希望者数と比較して大幅に不足しています。親はいつまでも元気ではいられません。希望者全員が入居できるよう、定員数を増やしてください。


2 災害時要援護者名簿及び個別避難支援計画の整備について

先日、新聞でも報道されましたが、県内でも一部の市町村で災害時要援護者名簿が作成されていない現実に驚いております。また、名簿が作成されている市町村でも、「手上げ方式」や「同意方式」による作成を行っているところが大半であり、災害が発生した場合に、実際に役立つものとなっているかどうか疑問が残ります。名簿と災害発生時に援護の必要な人々の実態とがかけ離れたものとならないよう、障害者手帳交付台帳等の既存の情報を柔軟に活用する「関係機関共有方式」を採用するよう市町村に積極的に働きかけ、県も全面的に協力するようお願いします。

そして、その名簿を生かし、災害時にすべての要援護者が支援を受けられるよう、個別の避難支援

計画を作成し,それが実効性のあるものとなるようなネットワーク作りをお願いします。現状では平成24年3月に改訂された県の「災害時要援護者支援対策マニュアル」が活かされていません。

3 避難所の整備について

自閉症児・者はその障害の特性から一般避難所や福祉避難所等で生活することは、たとえ一時的で

あっても非常に困難です。そのような状況を考慮していただき、「障害者の活動と交流の拠点施設」として私たちもよく利用している県障害者交流プラザ(体育館は一時避難所になっているとのことなので、それ以外のスペース)を、障害者とその家族・支援者を対象とした避難所として活用できるようにしてください。また、県が関係団体と結んでいる「災害時における宿泊施設の提供等に関する協定」により、ホテルや旅館等を利用する場合も、必ず家族や支援者と一緒に利用できるようにしてください。さらに、家族とともに「自宅で避難生活」を送らざるを得ない場合も考えられます。そうした「自宅避難所」にも支援の手が届くような仕組みを作ってください。


4 就労にかかる教育現場との連携について

障害者の就労につきましては、教育現場では、「一貫した教育」のために個別支援計画等が小学校から引き継がれるようになり、支援学校においても技能検定受検に対する取り組みが始まるなど、福祉、教育両面から就労・自立に対するバックアップ体制が整いつつあり、心強い限りです。

しかし、多くの子どもたち、そしてその家族が「就労するために必要なことは何か」を知らされることなく、つまり真に「就労に必要なこと」を学ぶ機会を逸したまま、就労目前の支援学校高等部に進学してから「企業実習は無理」という現実を学校かき付けられます。「教育」と「就労」のギャップが大きいのです。

多くは支援学校の先生方、また保護者が就労の現状に触れる機会がないために起こっています。「一貫した教育」が就労に向けたものとはなっていないのです。

障害者の就労・福祉に関わる各関係機関では、障害者が「就労し、働き続ける」ために何が必要かという情報を数多く蓄積されていることと思います。子どもたちが障害の程度に関わらず、「就労を目標にした幼少期からの一貫した個別支援計画」のもとで、より適切な教育を受けるために、このような貴重な情報を教育現場にフィードバックする仕組みを作ってください。


5 生き生きと働ける場について

「いけるよ!徳島・行動計画」平成25年度版に盛り込まれている「障害者の地域の中での自立と社会参加を促進するため、民間企業と公的機関が連携して障害者の一般就労を推進するとともに、就労支援事業所等で生産された製品のブランド化を進め、さらなる工賃アップを図る」こと、また「障害者の自立を支援する力ある人材を養成」することは、私たちの大きな願いでもあります。障害者がやりがいを持って生き生きと暮らしていくためには、工賃アップはもちろんですが、なにより働く場と、そこで支援を行う優秀な人材の確保が必要不可欠です。この行動計画の実現に向けて、具体的な施策を推進してください。


6 命を守る医療の確保について

障害の有無にかかわらず、私たちが地域で生活する大切な要件のひとつに、安心して受診することのできる医療機関が身近にあることが挙げられます。自閉症児・者は、その障害の特性から、自分の体の不調を自覚・説明すること、病院での検診・検査・治療の意味を理解することが難しいため、病院に行くこと自体が本人にも家族にも大きな負担となっています。そして、検診や検査をためらった結果、疾病の早期発見・早期治療が難しくなり、若くして命を落とす人が数多くいるのです。

かけがえのない命を守るため、県内の医療機関に、障害の特性に配慮した検診・検査・治療を行える体制を整えてください。県立病院にそのモデルとなる診療体制を率先して構築してください。



未だ「復興」というにはほど遠い東日本大震災の被災地の現状、上昇傾向にあるとされつつも日々の生活の中でなかなか実感することのできない現在の経済、そして、相も変わらず不安定な政治状況について考えたとき、私たちは将来に対する明るい見通しをなかなか持てずにおります。

そのような状況の中で、様々な特性を持つ自閉症児・者と家族が希望を持って生き生きと暮らしていけるような施策をさらに推進していただけるよう切にお願い申し上げます。障害があっても、ひとりひとりがかけがえのない人間であり、大切な家族なのです。