徳島県福祉課陳情のご報告とみなと高等学園見学について

2012年5月29日(火) 徳島県発達障害者総合支援センター ハナミズキ にて、徳島県障害福祉課への要望を行いました。


平成24年5月29日

徳 島 県 知 事

飯 泉 嘉 門  殿

徳島県自閉症協会

会長 堀内 宏美


要 望 書

 


県におかれましては、本年4月1日に発達障害者総合支援センター ハナミズキ小松島市にオープンされ、また、3月には徳島県障害者施策基本計画【素案】及び徳島県障害福祉計画(第3期)【素案】におけるパブリックコメント結果を公表されるなど、様々な障害施策の推進に積極的に取り組んでいただき、こころより感謝申し上げます。
 しかし、東日本大震災の現状、そして現在の政治的、経済的状況について考えたとき、私たちは将来に対する大きな不安を感じずにはいられません。自閉症児・者の未来のために、以下の事項に対して県として適切な対応をお願いします。

1.施設のあり方について
 入所及び通所施設の整備・拡充が県内各地で進められており、運営内容も家族や障害者本人のニーズに沿った支援を幅広く行っていただいていることにより心より感謝申し上げます。しかし、その設置数及び運営内容には地域によって大きな格差があり、受けられる支援に大きな違いがあります。
 このような地域格差をなくし、県内のどこで暮らしても同じように適切な支援が受けられるよう施設に対する支援及び指導を行ってください。

2.災害時の避難所運営及び福祉防災マップの作成について
 福祉避難所は、災害時に開設される、要援護者のために特別の配慮がなされた避難所とされておりますが、東日本大震災では、どこの避難所にも非常に多くの方々が押し寄せ、一般避難所とならざるを得ない状況となりました。
 このような現実を踏まえ、近い将来必ず発生する南海地震を想定し、要援護者が行き場を失い孤立することがないよう、要援護者もそうでない方も、安心して避難できる避難所運営をお願いいたします。大規模災害時には、福祉避難所は、もちろん、一般避難所にも要援護者は必ず避難してきます。ライフラインが絶たれ、ガソリンも不足し、他の避難所へ移ろうにも移れない事態も想定されます。このような事態が起こっても、すべての方々が心と身体の安定を保つため、要援護者とそうでない方また、必要な支援内容や障害特性によって、避難当初から部屋やスペースを分けるという、避難所内での「最初からの住み分け」が必要不可欠です。
 また、災害時にすべての要援護者が支援を受けられるようお、個別の避難支援計画を作成し、それを活かすネットワーク作りをお願いします。そして、福祉防災マップを作成し、地域住民の方々に広く周知してください。

3.療育手帳の判定について
 ここ数年、療育手帳の更新の際に、自閉症児・者本人や保護者が、前回の判定時より障害の程度が軽くなったという認識がないにもかかわらず、区分が変更された、あるいは手帳の交付が受けられなくなったという認識がないにもかかわらず、区分が変更された、あるいは手帳の交付が受けられなくなったという事例が数多く報告されています。短時間の、形式的な検査内容で障害の程度が軽くなったと判断されてしまうことは、今まで必要があるからこそ受けてきた支援が減ってしまうばかりか、最悪の場合、必要な支援が受けられなくなってしまうということに直結します。
 更新時の判定の際は、表面的な判断になることのないよう、保護者に十分な聞き取りを行うなどして、自閉症という障害の特性に十分配慮した判定を行ってください。
 また、新規の判定の際、客観的に見て支援が必要であるのに、その障害の程度を軽く判定され、手帳の交付を受けられないということも起こっています。新規の判定の際も、更新の際と同様に慎重に取り扱ってください。

4.発達障害者手帳について
 「発達障害者手帳」制度の創設についての国への働きかけをお願いします。近年、障害者手帳を持たない発達障害者も各種の福祉サービスを受けることが可能となっておりますが、さらにきめ細やかなサービスを受けるため、また、発達障害者のひとつである自閉症の特性についての認知度をさらに高め、広く社会の理解を得られるためにも「発達障害者手帳」は必要不可欠な制度です。障害の困難さをご理解いただき、この制度の創設を国に働きかけてください。

5.就労にかかる教育現場との連携について
 障害者の就労につきましては、本年2月に南部圏域障害者就労支援ネットワーク整備委員会が中心となって企業ネットワークを発足するなど、様々な取り組みを行っていただき心より感謝申し上げます。
 また、教育現場では、「一貫した教育」のために個別支援計画等が小学校から引き継がれるようになり、支援学校においても技能検定受検に対する取り組みが始まるなど、福祉、教育両面から就労・自立に対するバックアップ体制が整いつつあり心強い限りです。
 しかし、多くの子どもたち、そしてその家族が「就労のために必要なことは何か」を知らされることなく、つまり真に「就労に必要なこと」を学ぶ機会を逸したまま、就労目前の支援学校高等部に進学してから「企業実習は無理」という現実を学校から突き付けられています。「教育」と「就労」のギャップが大きいのです。
 多くは支援学校の先生方、また保護者が就労の現状に触れる機会がないために起こっています。「一貫した教育」が就労に向けたものとはなっていないのです。
 障害者の就労・福祉に関わる各関係機関では、障害者が「就労し、働き続ける」ために何が必要かという情報を数多く蓄積されていることと思います。子どもたちが障害の程度に関わらず、「就労を目標にした幼少期からの一貫した個別支援計画」のもとで、より適切な教育を受けるために、このような貴重な情報を教育現場にフィードバックする仕組みを作ってください。

6.働く場の確保について
 障害者の就労については、雇用率に改善は見られるものの依然厳しい状況が続いています。引き続き民間企業に障害者の法定雇用率の達成を強く働きかけるともに、県庁をはじめとする公的な機関での雇用、また、作業所などの働く場の確保やそこで製造された商品等の販路拡大についてもさらに検討してください。
 加えて、国、県及び市町村などが行っている障害者の就労に関する施策等について、支援学校に在籍する生徒とその保護者以外にも、その情報をわかりやすく、積極的に発信してください。

7.学校卒業後の「居場所」づくり
 今年4月1日にオープンした「徳島県発達障害者総合支援センター ハナミズキ」の活動に大きく期待を寄せています。
 なかでも、発達障害者の学校卒業後の「居場所」づくりに積極的に取り組んでいただいていることは私たちにとって大変心強いことです。
 職場や地域で孤立しがちなアスペルガー高機能自閉症など発達障害のある人たちにとって「同じ悩みを持つ仲間と集まって話がしたい」「安心して話を聞いてもらえる場所が欲しい」という思いは切実なものです。このような彼らの「居場所」を作ろうとしても、個人や小さな団体では難しく、「ハナミズキ」が彼らの心のよりどころとなるよう願っています。
 また、一般就労に向けた取り組みも同時に行っていただいており、彼らが社会で自信を持って働くために必要な支援と考えますので、更に充実していただけるようお願いいたします。個性豊かな彼らがそれを達成することができれば、たとえ少人数であったとしてもなにものにも換えがたい素晴らしい成果であると考えます。
 そして、すでに一般就労している人たちにとっても、福祉に関するさまざまな情報を気軽に得ることができれば大きな安心につながります。そのためにも「ハナミズキ」の存在とその活動を更に積極的にPRしてくださるようお願いいたします。


 私たちは東日本大震災を通して「命を守る」ことの大切さと難しさを改めて知ることとなりました。
 そして、大震災を体験された方々の経験談を通して、日頃からできる限りの「自立」と「他者の役に立つ」活動に取り組むことは、災害時に、自閉症児・者を含む発達障害者本人や家族はもとより、地域の方々など関わりある全ての人たちの負担を軽減し、共感を得、1日も早く日常の生活に戻るために必要なことであるということも学びました。
 それは、社会の中で愛され、自由に、豊かに、自分を肯定して生きていくことにつながっていきます。自閉症児・者を含む発達障害者も、障害の軽重にかかわらず、適切な教育と支援があれば「学ぶ」「働く」「社会の役に立つ」ことへの可能性に広がります。つまり、社会の負担を軽減し、真のノーマライゼーション社会を確立することになると私たちは考えます。自閉症児・者を含む発達障害者本人、そして私たち家族も精一杯努力をいたします。社会の中で将来に明るい希望を持って、安心して暮らしていけるような施策をさらに講じていただけるよう切にお願い申し上げます。
 障害があっても、ひとりひとりかけがえのない人間であり、かけがえのない人生です。

〇今回、「施設のあり方」について具体的な要望を行い、個々の事例にも踏み込んだ話し合いとなりました。
私たちの切実な思いに対して県からも具体的な対策案を示してくださり、誠意あるご回答に希望を持つことができました。

〇災害時における要援護者への対応については、現在、市町村単位で福祉避難所の増設及び地域における 支援のネットワーク作りを具体的に 進めているというご回答をいただきました。また、今回要望した内容についても前向きに考えていただけるそうです。

〇現在、センターでは約30名の発達障害の方から就労相談を受け、そのうちの約半数の方が何らかの形で職に就くことができているということで、このような成果を挙げてくださっていることは私たちにとって心強いことですね。

〇ここ数年、これまで福祉の谷間におかれていた高機能自閉症児者・アスペルガーの方々への支援が大きく取り上げられるようになりうれしいことですが、それと同時に親亡き後何十年も施設で暮らすことになる最重度・重度の自閉症児者への支援が置き去りにされてしまわないよう、徳島県自閉症協会では引き続き強く訴えていきたいと考えています。

〇今後の教育と福祉(就労)との連携については、「みなと高等学園」を中心として行われていくことになるだろうというお話を伺いました。期待したいところです。

〇要望の後、「徳島県発達障害者総合支援センター ハナミズキ」と「みなと高等学園」の見学をさせていただきました。「みなと高等学園」では、冨樫校長先生と名山教頭先生がユーモアいっぱいに細やかな説明をしてくださいました。生徒さん達の明るい笑顔にも出会うことができ、とても有意義な見学となりました。お忙しい中ありがとうございました。



 笑顔が素敵な富樫校長先生。

みなと高等学園見学の際の様子です

体育館
 避難所になることを想定した多数のコンセント、シャワー室などが設置されていました。

木工室の様子
 手が刃に触れると、体の静電気を察知して機械が止まる安全設計がされていました。
 木工のあらゆる作業ができるそうです。

ビルメンテナンス企業で働くスキルを身に着けるための実習室
 ビルメンテナンスの認定資格を設け、生徒は合格を目指して練習に励みます。企業は認定の級数によって生徒の技能を知ることができ、より具体的な就労支援ができるよ うに工夫されていました。

昼休み、生徒自ら販売するお弁当。
 マーケティングから仕入れ、販売、そして収支決算まで生徒さんが行います。
 一番人気の実習とだけあって、皆さん生き生きと取り組んでおられました。

宿泊施設
 ユニットバスも完備されており、ホテル宿泊の練習もできます。

調理室
 調理室には調理前の手順書をボードに貼ってありました。
 手順書があれば、自分で確認しながら安心して確実に準備することができます。
 注意されることもなくなり、自信へとつながります。
 このような手順書が、いたるところにさりげなく貼られていました。私達が使う時にも便利なものです。

図書室
 私達が読みたくなるような面白そうな実用書が多かったのですが、これから生徒さんの希望も入れて蔵書を増やしていくそうです。

音楽室
 なんと、ギターが一人一本ずつ割り当てられていました。

美術室

理科室
 生物が履修できます。

情報実習室
 ソフトの充実が素晴らしいそうです。パソコンの得意な生徒さんにとって、就労に向けた大きな力となるでしょう。

見学を終えて最後に参加者全員で記念撮影しました。
 冨樫校長先生、名山教頭先生、お忙しい中ご案内ありがとうございました。
また、徳島県障害福祉課の方々には、わざわざ県庁からお越しいただき、また、要望に引き続いてセンターやみなと高等学園の見学までご配慮いただき、本当にありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

徳島県自閉症協会